「インサイダー」

2002年5月22日
『インサイダー』
[The Insider]
1999年【米】 監督 ・脚本・制作:マイケル・マン (「アリ」の監督)
男優 :アル・パチーノ
  :ラッセル・クロウ

<ストーリー>
大手タバコ会社の企業秘密を暴こうとする、報道番組の腕利きのプロデューサー(A・パチーノ)と、良心の呵責と保身の板ばさみに苦しむ、タバコ会社の元副社長(R・クロウ)。企業名もマスメディアもすべて実名で公開されている。これは、実話である。

<感想>
喫煙者の方には評判が悪いようだが(苦笑)、この映画は、タバコの害を訴えるものではない。圧力に屈しなかった勇気ある人間を描いている。そしてマスコミの実態も。3時間という長丁場で、あれだけの緊迫感を観客に与え続けるA・パチーノとR・クロウも凄い。

牛乳や肉等と違って、もとから嗜好品であり、今では、ある程度は毒物である、という認識のあるタバコであるが、アメリカ7社のタバコ会社が「健康に害はないと思われる」と『宣誓』したという事実は、初めて知った。個人的には、ここがキーだ。自分や家族が口にするものではないものの安全性に、ワイガンド博士は
命を、家族を、人生をかける。それは、「科学者」としての良心であり、プライドだ。 だからこそ、あれほどまでに、迷っては決断し、また迷う。
立派な正義の味方ではない、くたびれきって不安でほとんどノイローゼ状態のオヤジだ。だからこそ、リアリティーがあり、共感できる。
このあたり、さすがはM・マン監督。リアリティーの鬼。

A・パチーノの怪演はさすがで、炎のジャーナリストを見事に演じている。執念、執念、また執念。「プロフェッショナル魂」に圧倒される。2人の「動」と「静」が
3時間の長さを感じさせない。
そして、それぞれの妻。会社のことを何も話せないワイガンド博士。聞こうとすらしない妻。片や、さすがジャーナリストの妻。口のはさみどころが的確で、監督の
理想のワイフ像とも思われるほどだ。

そして・・・結局、彼らは、何を手にし、何を失った?得たものの価値、失ったものの価値。 
人生は、常に選択の連続だ。1を得るために99を失うこともある。だが、
ラストのタイトルロール時に、彼らの「その後」を知ることができる。実話ならではだが、失った99とは違う新しい∞の何かが手に入ったかも、しれない。


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