「至福の時」
2002年11月4日『至福の時』 2002年中国
【幸福時光】(HAPPY TIMES)
監督:チャン・イーモウ(張芸謀)
俳優:チャオ・・・チャオ・ベンジャン
ウー・イン・・・ドン・ジエ
フー・・・フー・ピアオ
継母・・・ドン・リーファン
第52回ベルリン国際映画祭特別招待作品
<ストーリー>
中国の大連。失業中の労働者チャオは、19回目のお見合いをするが、相手の女性に大金を用意するよう要求され、なんとかゴールインしたい彼は金持ちであるかのようにホラを吹いてしまう。オンボロバスを掃除してペンキを塗ってベッドを置いただけのラブホテルもどきを、仲間のフーとやむなく造り、「至福旅館」の社長だ、と嘘をついてしまうのだ。
見合い相手の家には、甘やかされたこにくたらしぃ息子のほかに、前夫の連れ子で盲目の少女、ウー・インもいた。継母にいびられ家を飛び出した彼女を、継母は体よくチャオに押しつけ、住みこみで旅館で働かせてくれと頼む。
さて、オンボロバスは役所に撤去され、旅館なんぞありはしない。だが結婚はしたいし、少女も可哀想で放ってはおけない。
どうしたものか・・・・。
<感想>
すでに巨匠といって過言でないイーモウ監督の最新作。
セリフは俳優たちのアドリブから監督が取捨選択したものだという。物語の運びがこれだけ荒唐無稽なのに、妙なリアリティが画面に溢れているのは、そのためなのだろう。
イーモウ監督は、作品ごとにまったく違った味を魅せるところがいい。
今回は、一言でいうなら、「悲喜劇」。滑稽だったり、ブラックだったり「笑い」の要素もたっぷり。
そして、ホロリとさせる人情の味がする涙と、やりきれない悲しみの涙も・・・。
人生の複雑さが凝縮されている。
主役のチャオ・ベンジャンは、根っからの善人ゆえに悪意はないがホラを重ねてボロを出さぬように苦心惨憺する中年男チャオを、実に人情味たっぷりに演じている。
5万人の応募者の中から選ばれたヒロインのウー・イン役を演じるドン・ジエ。イーモウ監督の作品には、美女、美少女は絶対に欠かせない。彼女のあやういまでの汚れのなさ、儚げな体つきと、盲目の役でありながら意志の光を燃やす澄んだ瞳。曇った表情が笑顔に変わるとき、まさに、蕾が花開いたかのような可憐さだった。
本当のHAPPYは、目に写るものではなく、人の心の中にあるのだということ。現実はどんなに過酷で手で掴めるHAPPYはなくても。
不安と希望を胸に歩き続ける少女の白杖の頼りなげだが、止まらない小さな音が、印象に残っている。
【幸福時光】(HAPPY TIMES)
監督:チャン・イーモウ(張芸謀)
俳優:チャオ・・・チャオ・ベンジャン
ウー・イン・・・ドン・ジエ
フー・・・フー・ピアオ
継母・・・ドン・リーファン
第52回ベルリン国際映画祭特別招待作品
<ストーリー>
中国の大連。失業中の労働者チャオは、19回目のお見合いをするが、相手の女性に大金を用意するよう要求され、なんとかゴールインしたい彼は金持ちであるかのようにホラを吹いてしまう。オンボロバスを掃除してペンキを塗ってベッドを置いただけのラブホテルもどきを、仲間のフーとやむなく造り、「至福旅館」の社長だ、と嘘をついてしまうのだ。
見合い相手の家には、甘やかされたこにくたらしぃ息子のほかに、前夫の連れ子で盲目の少女、ウー・インもいた。継母にいびられ家を飛び出した彼女を、継母は体よくチャオに押しつけ、住みこみで旅館で働かせてくれと頼む。
さて、オンボロバスは役所に撤去され、旅館なんぞありはしない。だが結婚はしたいし、少女も可哀想で放ってはおけない。
どうしたものか・・・・。
<感想>
すでに巨匠といって過言でないイーモウ監督の最新作。
セリフは俳優たちのアドリブから監督が取捨選択したものだという。物語の運びがこれだけ荒唐無稽なのに、妙なリアリティが画面に溢れているのは、そのためなのだろう。
イーモウ監督は、作品ごとにまったく違った味を魅せるところがいい。
今回は、一言でいうなら、「悲喜劇」。滑稽だったり、ブラックだったり「笑い」の要素もたっぷり。
そして、ホロリとさせる人情の味がする涙と、やりきれない悲しみの涙も・・・。
人生の複雑さが凝縮されている。
主役のチャオ・ベンジャンは、根っからの善人ゆえに悪意はないがホラを重ねてボロを出さぬように苦心惨憺する中年男チャオを、実に人情味たっぷりに演じている。
5万人の応募者の中から選ばれたヒロインのウー・イン役を演じるドン・ジエ。イーモウ監督の作品には、美女、美少女は絶対に欠かせない。彼女のあやういまでの汚れのなさ、儚げな体つきと、盲目の役でありながら意志の光を燃やす澄んだ瞳。曇った表情が笑顔に変わるとき、まさに、蕾が花開いたかのような可憐さだった。
本当のHAPPYは、目に写るものではなく、人の心の中にあるのだということ。現実はどんなに過酷で手で掴めるHAPPYはなくても。
不安と希望を胸に歩き続ける少女の白杖の頼りなげだが、止まらない小さな音が、印象に残っている。
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