「スリーパーズ」

2002年11月6日
『スリーパーズ』
[Sleepers]
1996年【米】 監督 :バリー・レビンソン
男優 :ブラッド・レンフロ
:ブラッド・ピット
:ダスティン・ホフマン
:ケビン・ベーコン
:ロバート・デ・ニーロ
:ジェイソン・パトリック
  ビットリオ・ガスマン
女優 :ミニー・ドライバー
音楽 :ジョン・ウィリアムズ
脚本 :バリー・レビンソン

<ストーリー>
一九六七年、ニューヨークのウエストサイド。貧民街に生まれた四人の少年、マイケル、シェイクス、ジョン、トミーは教会の神父や街のドンに可愛がられ守られながら、ワルもするが、楽しい少年時代を送っていた。
ところが、たわいない悪ふざけからまさかの殺人未遂事件を引き起こし、そろって少年院へ。
そこでノークスら複数の看守から耐え難い性的虐待を受け、心に深い傷を負う。
一九八一年、少年院でのことを自分たちの胸に収め、別々の道を歩む四人。マイケルは地方検事補に、シェイクスは新聞記者に、ジョンとトミーはマフィアの一員になっていた。だがある日、ジョンとトミーが偶然、忘れたくても忘れられない、憎むべきノークスを見かけてしまった・・・・。

過去の清算が始まる・・・!
(スリーパーズとは、「少年院に9カ月以上収容された者たち」をさすスラング)

<感想>
かなりショッキングな社会派ドラマである。
「復讐」でしか心を癒せない者。復讐の果てに、自らの心を枯渇させてしまう者。そういう親友たちを見て、暗澹とする者・・・。
暴力で相手を意のままにすることを少年院で看守によって教えられてしまったジョンとトミーが、成長してマフィアの下っ端になってしまったのは、悲しい因果であり、ノークスはまさに墓穴をほったともいえよう。
だが・・・恨む相手をこの世から消しても、彼らの無垢な青春が取り戻せるわけではない・・・。
それでも、相手が安穏と酒を飲み空気を吸って笑っていられることが許せない、その怒り。それが痛々しい。
でも、やはりラストは悲しすぎる。憎しみと悲しみだけを糧に10年余を費やした彼らに残されたものは、愛することを忘れ、愛されることを拒む萎縮した心だけだたなんて・・・。
「未来は光り輝き、友は永遠だと思っていた。」
翼をもぎとられた少年たちの哀歌だ。

悲惨きわまりないストーリーではあるが、登場人物、特に、4人を陰に日向に支える大人たちの存在は、この映画の見所である。ロバート・デ・ニーロ演じるボビー神父。ダスティン・ホフマン演じるアル中の弁護士。ビットリオ・ガスマン演じる、街をしきるドンでありながら、少年たちに慕われる男。憎らしさ満点、悪役のプロ、ケビン・ベーコン。彼らが脇を固めていたからこそ、物語に厚みが出たのだろう。
そして、一輪の野の花のような、彼らの幼馴染みでありマドンナである女性を演じるミニー・ドライバーの存在が際立っていた。愛する男性の砂漠のような心を、どう手を尽くしても、潤してあげられない哀しさを、抑えた演技で表現していた。

アメリカの少年院が、本来の目的通りに、「少年の更正」を目的とする施設だったならば・・・。政府は否定するが、実話であるとされている。
アメリカで「悪魔のような看守」を題材とした物語が後を絶たないのは、やはり事実があるからであろう。
ブラッド・ピットの役どころは、相当難しいものだったと思われるが、他の作品ではまず観られない、
静かに悲しみを湛えた男を好演していた。




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