「紅夢」

2002年11月9日
『紅夢』
【大紅燈籠高高掛】 1991年 中国・香港(Raise The Red Lantern)

監督 チャン・イーモウ
制作 チウ・フーション
制作指揮 ホウ・シャオシェン
原作 スー・トン
脚本 ニー・チェン
撮影 チャオ・フェイ

女優:コン・リー・・・頌蓮 (スンリェン)
   チン・シューユエン
   ホー・ツァイフェイ
   コン・リン
男優: マー・チンツー
    チョウ・チー

’91年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞
’93年ベルギー映画批評家協会賞グランプリ
’91年イギリス映画テレビ芸術学院賞
’93年百花賞最優秀作品賞・最優秀女優賞(鞏俐)

<ストーリー>
封建的な古いしきたりが根強く残る1920年代の中国が舞台。大学生のスンリェン(コン・リー)は、継母の命令で、大金持ちの家に第四夫人として嫁がされる。4人の妻たちは、それぞれに与えられた廷内の院に住み、当主がその夜、床をともにする妻の部屋の前には赤い提灯が灯される。
外界から完全に隔絶された古い屋敷の中で、女たちの欲望は赤い提灯が象徴する権力と栄誉に集注され、そこに嫉妬と策謀の渦が生じる・・・。

<感想>
とにかく、背筋が凍るように色彩の美しい映画だ。
夜の闇は淫靡に蒼く、赤い提灯の灯す火は狂おしく紅い。「赤」を女の情念としてのメタファーに多用するイーモウ監督の意図が、もっとも強烈に表れているのがこの作品かもしれない。
家の主は、後姿や遠くに横顔、声、床のカーテンごしにうっすらとしか、その姿を映画中に現さない。一度も男の顏を観客は観ることがないままである。

玉の輿を狙っていたためスンリエンを憎む美少女の小間使いヤール、一見、とても優しげだが何か裏のありそうな中年の第二夫人、まだ若く嫉妬深く意地悪だが、妖艶で美しく、裏表のない第三夫人。そして何もかもが腹だ立たしい孤独な第四夫人スンリエン。主にこの4人の間の策略が、物語の柱となっている。
みどころは、第二夫人と第三夫人の「印象」が、一瞬にして逆転するシーン。

封建社会において、女は、男の単なるアクセサリーであり、男児を産むための道具であった。学生あがりの主人公、スンリェンだけが、その虚しさに心を壊してゆく・・・。

そして衝撃のラスト。
まだ無邪気な若い第五夫人が登場し、「上海ルージュ」と同じく、繰り返されるのであろう、悲劇を
暗示し、終わる・・。

スケールが小さいからこそ、恐ろしく濃度の高い
恐怖感や絶望感が浮かび上がっている。



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