「マレーナ」
2002年11月14日『マレーナ』【Malena】2000年伊・米
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
原作:ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ
俳優:モニカ・ベルッチ(マレーナ)
ジュゼッペ・スルファーロ(レナート)
ガエタノ・アロニカ
ピエトロ・ノタリアーニ
ルチアーノ・フェデリコ
<ストーリー>
戦争が始まってまもない1940年、シチリア島の眠ったような漁村、カステルクト。
長く続く海岸通り。悪ガキたちの密やかな楽しみ村で一番美しい女“マレーナ”を見る儀式を、初めて12歳の少年レナートは知る。「彼女が来る!」一人が叫び、全員が突堤に並ぶ。やがて、ゆっくりと彼女が姿を現す…。夫は出兵中で、彼女は1人で暮らしていた。町中の男たちから注がれる熱い視線さえ無視して、戦線にいる夫を想い、年老いて盲目の、夫の父親の世話をしていた。でもそれを知っているのはレナートだけ・・・。街の人たちは情夫と密会していると噂話に夢中。少年レナートは恋に焦がれるあまり、マレーナを影のように追い、彼女の家の窓の隙間越しに深夜ひとりでいる彼女を盗み見しては、自慰にふけった。だが・・・マレーナの夫の戦死が伝えられ、マレーナにとっての悲劇が幕を開ける。未亡人となった彼女を狙う男達の視線が、彼女を転落への道へと誘っていくのだ。だが少年には、どうすることもできない・・・・・。ただ、胸張り裂ける想いで見つめるしかなかった。そう、見つめるだけで、守れると信じていた幼く非力な少年だった・・。
やがて、彼女の悲惨な人生に、まさかの一筋の希望が。だが彼女はそれを知るよしもない。
少年は真実の愛のため、勇気を振絞り・・・。
<感想>
これは、思春期の少年の、少年の日々との決別を描いた、悲しく美しく、そして生きる力に溢れた物語である。それと同時に、戦争の真の恐ろしさは、武器や血しぶきや死ではなく、人間の残忍性が剥き出しになる集団心理を生むところにあるということを、ショッキングなまでに鮮烈に描いている。
マレーナの周囲を取り巻く人間達のエゴ、醜さ、残忍性が、戦争の根底にあるそれと同じものなのだ。
手に入らない美しいものは壊してしまおうとする男たち。嫉妬に狂い、鬼と化す女たち。
少年レナートの恋は、はじめ盲目的かつ淫らで、可笑しくすらある。だが、街の人の知らない彼女の真実を見つめ続け、少年は、愛を知り、男へと成長しはじめる。そして、感動の幕切れで、初めて彼女に言葉を、心のたけを込めた言葉を一言だけ、かける。かつて、彼女の家の方向にすっとばし続けた自転車で、レナートは脱皮するかのように力強く、過去の思い出に背を向けて走り去る。
このシーンは、秀逸だ。
キャッチコピーの「あの頃、あなたが世界のすべてだった・・・」きっと、誰もが、忘れ得ない唯一の「誰か」を心の庭に住まわせ、それを糧に生きぬいて行く。そして、誰もが、自分自身、誰かの「唯一のひと」なのだ。
そう思えば、どんな時代に生きようと、人生、捨てたもんじゃない。
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
原作:ルチアーノ・ヴィンセンツォーニ
俳優:モニカ・ベルッチ(マレーナ)
ジュゼッペ・スルファーロ(レナート)
ガエタノ・アロニカ
ピエトロ・ノタリアーニ
ルチアーノ・フェデリコ
<ストーリー>
戦争が始まってまもない1940年、シチリア島の眠ったような漁村、カステルクト。
長く続く海岸通り。悪ガキたちの密やかな楽しみ村で一番美しい女“マレーナ”を見る儀式を、初めて12歳の少年レナートは知る。「彼女が来る!」一人が叫び、全員が突堤に並ぶ。やがて、ゆっくりと彼女が姿を現す…。夫は出兵中で、彼女は1人で暮らしていた。町中の男たちから注がれる熱い視線さえ無視して、戦線にいる夫を想い、年老いて盲目の、夫の父親の世話をしていた。でもそれを知っているのはレナートだけ・・・。街の人たちは情夫と密会していると噂話に夢中。少年レナートは恋に焦がれるあまり、マレーナを影のように追い、彼女の家の窓の隙間越しに深夜ひとりでいる彼女を盗み見しては、自慰にふけった。だが・・・マレーナの夫の戦死が伝えられ、マレーナにとっての悲劇が幕を開ける。未亡人となった彼女を狙う男達の視線が、彼女を転落への道へと誘っていくのだ。だが少年には、どうすることもできない・・・・・。ただ、胸張り裂ける想いで見つめるしかなかった。そう、見つめるだけで、守れると信じていた幼く非力な少年だった・・。
やがて、彼女の悲惨な人生に、まさかの一筋の希望が。だが彼女はそれを知るよしもない。
少年は真実の愛のため、勇気を振絞り・・・。
<感想>
これは、思春期の少年の、少年の日々との決別を描いた、悲しく美しく、そして生きる力に溢れた物語である。それと同時に、戦争の真の恐ろしさは、武器や血しぶきや死ではなく、人間の残忍性が剥き出しになる集団心理を生むところにあるということを、ショッキングなまでに鮮烈に描いている。
マレーナの周囲を取り巻く人間達のエゴ、醜さ、残忍性が、戦争の根底にあるそれと同じものなのだ。
手に入らない美しいものは壊してしまおうとする男たち。嫉妬に狂い、鬼と化す女たち。
少年レナートの恋は、はじめ盲目的かつ淫らで、可笑しくすらある。だが、街の人の知らない彼女の真実を見つめ続け、少年は、愛を知り、男へと成長しはじめる。そして、感動の幕切れで、初めて彼女に言葉を、心のたけを込めた言葉を一言だけ、かける。かつて、彼女の家の方向にすっとばし続けた自転車で、レナートは脱皮するかのように力強く、過去の思い出に背を向けて走り去る。
このシーンは、秀逸だ。
キャッチコピーの「あの頃、あなたが世界のすべてだった・・・」きっと、誰もが、忘れ得ない唯一の「誰か」を心の庭に住まわせ、それを糧に生きぬいて行く。そして、誰もが、自分自身、誰かの「唯一のひと」なのだ。
そう思えば、どんな時代に生きようと、人生、捨てたもんじゃない。
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