「息子の部屋」
2002年11月23日『息子の部屋』2001年イタリア 【la stanza del figlio】(THE SON’S ROOM)
監督・原案・主演:ナンニ・モレッティ(父ジョバンニ)
俳優:ラウラ・モランテ(母パオラ)
ジャスミン・トリンカ(姉イレーネ)
ジュゼッペ・サンフェリーチェ(息子 アンドレア)
ソフィア・ビジリア(アリアンナ)
☆2001年カンヌ映画祭パルムドール受賞☆
<ストーリー>
精神分析医ジョバンニはイタリアの平凡な中流家庭の父親。夫婦仲はよく、子供たちも勉強にスポーツに励み、家族は幸せだった。
ハイティーンの娘よりも、やや気がかりだったのが、思春期にさしかかった年頃の息子。学校で悪戯をしたり、親の把握しきれないことも増えてきたようで父親は気がかりだった。
そんなある日、事故で息子は帰らぬ人となった・・・・。残された家族は悲しみにくれ、父は死の原因は自分にあると思いこみ後悔に苛まれる。軋む夫婦仲。荒れる娘。
そんなある日、息子のガールフレンドから、手紙が。夏休みのキャンプで知り合ったようで、息子の死をどう伝えていいか、悩む父。逢いたがる母。
そして、突然自宅を訪ねてくれた少女が見せてくれた写真。そこに写っていたのは、家族が知っているのに本当は知らない場所・・・それは、部屋で1人寛ぐ息子の姿だった・・・・・・。
<感想>
静かに心に染み渡る名作だ。ガンバリズムの日本人には理解しにくいかもしれないが、イタリアという国は人を急かさない。人生を急かない。
喪失感にうなだれ、迷い、傷つけあいもし、前に進めなくなっている家族を、監督は温かく肯定している。
そんな家族の閉塞感に小さな小さな出口を開けた
もの。それが、息子がガールフレンドに送った写真---自室で楽しそうにポーズをとる息子の写真--だ。
まだまだ子供だと思っていたあの息子が恋を?
息子を慕ってくれる少女がいたなんて?
写真に写る息子の部屋で微笑んでいるのは、確かに知っているのに、どこか家族の知らない息子だったのだ。
もちろん、それを語るセリフは1つもない。
だが、伝わってくるのだ。息子が死んだ瞬間から凍てついていた時間が解け出す・・・。
死んだ子の年を数えていては生きていけないのだ・・・そんな諦念。
ゆっくりと、喪失感と折り合いをつけていけばいい。
ラストシーン、ジェノバ。美しい夜明けの海岸に打ち寄せる波をただ見つめる家族の後姿。
セリフは娘の「ここどこ!?今日は試合だっていうのに!」だけ。 これ以上に、この家族の時間が動き出すことを予感させる素晴らしいセリフはない。
そして、少女が1人でなく見知らぬ少年と旅立つことも、暗示だ。息子は間違いなく、少女の胸に生きていたが、それは大切にしまわれる過去であるということ・・・。父親が、そのことに触れかけてやめる
のも、憎い演出だ。
監督・原案・主演:ナンニ・モレッティ(父ジョバンニ)
俳優:ラウラ・モランテ(母パオラ)
ジャスミン・トリンカ(姉イレーネ)
ジュゼッペ・サンフェリーチェ(息子 アンドレア)
ソフィア・ビジリア(アリアンナ)
☆2001年カンヌ映画祭パルムドール受賞☆
<ストーリー>
精神分析医ジョバンニはイタリアの平凡な中流家庭の父親。夫婦仲はよく、子供たちも勉強にスポーツに励み、家族は幸せだった。
ハイティーンの娘よりも、やや気がかりだったのが、思春期にさしかかった年頃の息子。学校で悪戯をしたり、親の把握しきれないことも増えてきたようで父親は気がかりだった。
そんなある日、事故で息子は帰らぬ人となった・・・・。残された家族は悲しみにくれ、父は死の原因は自分にあると思いこみ後悔に苛まれる。軋む夫婦仲。荒れる娘。
そんなある日、息子のガールフレンドから、手紙が。夏休みのキャンプで知り合ったようで、息子の死をどう伝えていいか、悩む父。逢いたがる母。
そして、突然自宅を訪ねてくれた少女が見せてくれた写真。そこに写っていたのは、家族が知っているのに本当は知らない場所・・・それは、部屋で1人寛ぐ息子の姿だった・・・・・・。
<感想>
静かに心に染み渡る名作だ。ガンバリズムの日本人には理解しにくいかもしれないが、イタリアという国は人を急かさない。人生を急かない。
喪失感にうなだれ、迷い、傷つけあいもし、前に進めなくなっている家族を、監督は温かく肯定している。
そんな家族の閉塞感に小さな小さな出口を開けた
もの。それが、息子がガールフレンドに送った写真---自室で楽しそうにポーズをとる息子の写真--だ。
まだまだ子供だと思っていたあの息子が恋を?
息子を慕ってくれる少女がいたなんて?
写真に写る息子の部屋で微笑んでいるのは、確かに知っているのに、どこか家族の知らない息子だったのだ。
もちろん、それを語るセリフは1つもない。
だが、伝わってくるのだ。息子が死んだ瞬間から凍てついていた時間が解け出す・・・。
死んだ子の年を数えていては生きていけないのだ・・・そんな諦念。
ゆっくりと、喪失感と折り合いをつけていけばいい。
ラストシーン、ジェノバ。美しい夜明けの海岸に打ち寄せる波をただ見つめる家族の後姿。
セリフは娘の「ここどこ!?今日は試合だっていうのに!」だけ。 これ以上に、この家族の時間が動き出すことを予感させる素晴らしいセリフはない。
そして、少女が1人でなく見知らぬ少年と旅立つことも、暗示だ。息子は間違いなく、少女の胸に生きていたが、それは大切にしまわれる過去であるということ・・・。父親が、そのことに触れかけてやめる
のも、憎い演出だ。
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