「ビューティフル・マインド」
2002年11月30日ビューティフル・マインド 【A BEAUTIFUL MIND】 2001年・米
★第74回アカデミー賞 作品賞・監督賞・助演女優賞・脚色賞
監督:ロン・ハワード
音楽:ジェームズ・ホーナー
原案:シルビア・ネイサー「ビューティフル マインド」
脚本:アキバ・ゴールズマン
俳優:ラッセル・クロウ(ジョン・ナッシュ)
エド・ハリス(パーチャー)
ジェニファー・コネリー(アリシア)
ポール・ベタニー(チャールズ)
アダム・ゴールドバーグ(ソル)
ジョッシュ・ルーカス(ハンセン)
クリストファー・プラマー(ローゼン)
<ストーリー>
求め続つづけ、探しつづけ、生きつづけてきた……。研究に打ち込むあまり、自分の魂のありかさえわからなくなっていく1人の天才数学者、ジョン・ナッシュ。野心に燃える青春時代に始まり、妻の愛に支えられ、精神分裂病で半壊した自分と闘いながらノーベル賞を受賞するまでの苦難の47年間を描いた作品。
原作はナッシュの半生記であるが、アキバ・ゴールズマンの脚本は、大幅に映画的要素を盛り込んだ、フィクションである。
<感想>
この作品は、一流のサスペンスであり、深い夫婦愛を描いたラブストーリーであり、難病と闘う1人の男の苦悩のドラマであり、かつ、現代の経済学の基礎となった理論を生んだ偉人の半生記である。
◇サスペンス◇
冷戦下のアメリカ。第2次世界大戦で洗練された数学的分析が暗号解読に役立ったことから、今なお張りつめた時代が、若き数学者たちに寄せる期待は大きかった。
ジョンはいつも焦燥していたのだ。大学院時代はライバルに勝つことに。そして、憧れの研究所に就職できても、めったに「ダイレクトに世の役にたつ仕事」がないことに・・・。天才は焦りから心を病んでゆくが、この映画が一流のサスペンスでもある点は、観客の視点を主人公に完璧に同調させ、何が幻覚で、何が事実なのかがわからなく演出している点だ。それが判明したとき、主人公と
同様の衝撃を、観客もうけるのである。
◇ラブストーリー◇
夫婦の愛。だが、ジョンはほぼ尽くされる一方であり、妻アリシアはまるで聖母のように献身的に尽くす。稼げない夫の代りに一家の大黒柱として働き、息子を育て、夫を介護し・・・それは、想像を絶する闘いであったことだろう。
ソルに愚痴をこぼすシーンがあるが、あの時点では、まだ本当に夫婦の危機には至っていなかった。
この作品で、あまりにアリシアを「聖女」のように描きすぎではないかという批判は多いだろう。本物のアリシアは厳しすぎる現実から一度、逃げているのだが、映画ではそこは削り、一生、夫に尽くしぬいた妻として描かれている。
ジョンが再入院をやめる決意をした後からが、アリシアの本当の苦難の日々だったのは明らかなのに、映画では、夫に「リアルと幻覚は、頭ではなくてハートで区別するのかも」と印象的なセリフを
告げたあと、ほとんど画面に登場しない。確かに、そこからがジョンにとっても真の闘いの日々であり、妻の苦労は、夫の苦しみから
観客に想像させるしかなかったのかもしれないが、セリフは例えばなくても、共に老いてゆく妻の姿も欲しかったように思う。だが、
姿はなくても妻の存在のアピールを、監督は忘れていないことも、
書き加えておきたい。
母校プリンストン大学というゆりかごで、静かで長い闘いの日々過ごしゆっくり脱皮してゆくジョンの“再生”こそが、最大の山場であるが、そこには、象徴的に「妻のサンドウィッチ」のみが出てくる。これも、監督の意図なのであろう・・・。見えないけれど、確実に彼を支えている古女房を感じさせるのに、このサンドウィッチはとてもインパクトがあった。
◇難病と闘う男◇
ラッセル・クロウがこの役に挑むにあたって、「精神を病んでいる人間でも、本人の努力と、周囲の理解と強力があれば、普通に結婚し、子を授かり、仕事につける可能性がある」ことを伝えたい、と言っている。
『統合失調症』は、現代でも治療法が確立されておらず、周囲の無理解に苦しむ患者がたくさんいるのだ。
「人間の力を超えたことにも、挑戦してみたい」ジョンは挑戦し続ける男だ。数字に、真理に、病気に、そして、本当の自分の内面に。諦めないということ。言葉でいうほど簡単ではないからこそ、
半生をかけて挑戦し続け、現在も闘い続けるジョンに、我々は心動かされるのだ。
ステキなセリフがあった。恋人時代のジョンとアリシア。
数学でわからないことはなくても、愛が何だかよくわからない
ジョンに、アリシアがこう尋ねる。
How big is the universe?
Infinite.
How do you know?
I know because all the data indicates it’s infinite.
But it hasn’t been proven yet.
No.
You haven’t seen it.
No.
How do you know for sure?
I don’t, I just believe it.
It’s the same with love I guess.
(文献:DHC完全字幕シリーズ「ビューティフル・マインド」)
(以下、意訳)
宇宙の広さはどのくらい?
無限だ。
何故わかるの?
宇宙は無限だっていうデータがあるからさ。
でも、まだ証明はされていないんでしょ?
ああ。
見たこともないんでしょ?
ああ。
じゃ、なぜそれが真実だと?
さぁ。信じてるだけだ。
愛も、同じことだと思うの。
なかなか含蓄があります。数字では決して計れない『愛』。
生涯、夫の再生を信じ続けた妻の愛は、ここから始まっていたのですね。
★第74回アカデミー賞 作品賞・監督賞・助演女優賞・脚色賞
監督:ロン・ハワード
音楽:ジェームズ・ホーナー
原案:シルビア・ネイサー「ビューティフル マインド」
脚本:アキバ・ゴールズマン
俳優:ラッセル・クロウ(ジョン・ナッシュ)
エド・ハリス(パーチャー)
ジェニファー・コネリー(アリシア)
ポール・ベタニー(チャールズ)
アダム・ゴールドバーグ(ソル)
ジョッシュ・ルーカス(ハンセン)
クリストファー・プラマー(ローゼン)
<ストーリー>
求め続つづけ、探しつづけ、生きつづけてきた……。研究に打ち込むあまり、自分の魂のありかさえわからなくなっていく1人の天才数学者、ジョン・ナッシュ。野心に燃える青春時代に始まり、妻の愛に支えられ、精神分裂病で半壊した自分と闘いながらノーベル賞を受賞するまでの苦難の47年間を描いた作品。
原作はナッシュの半生記であるが、アキバ・ゴールズマンの脚本は、大幅に映画的要素を盛り込んだ、フィクションである。
<感想>
この作品は、一流のサスペンスであり、深い夫婦愛を描いたラブストーリーであり、難病と闘う1人の男の苦悩のドラマであり、かつ、現代の経済学の基礎となった理論を生んだ偉人の半生記である。
◇サスペンス◇
冷戦下のアメリカ。第2次世界大戦で洗練された数学的分析が暗号解読に役立ったことから、今なお張りつめた時代が、若き数学者たちに寄せる期待は大きかった。
ジョンはいつも焦燥していたのだ。大学院時代はライバルに勝つことに。そして、憧れの研究所に就職できても、めったに「ダイレクトに世の役にたつ仕事」がないことに・・・。天才は焦りから心を病んでゆくが、この映画が一流のサスペンスでもある点は、観客の視点を主人公に完璧に同調させ、何が幻覚で、何が事実なのかがわからなく演出している点だ。それが判明したとき、主人公と
同様の衝撃を、観客もうけるのである。
◇ラブストーリー◇
夫婦の愛。だが、ジョンはほぼ尽くされる一方であり、妻アリシアはまるで聖母のように献身的に尽くす。稼げない夫の代りに一家の大黒柱として働き、息子を育て、夫を介護し・・・それは、想像を絶する闘いであったことだろう。
ソルに愚痴をこぼすシーンがあるが、あの時点では、まだ本当に夫婦の危機には至っていなかった。
この作品で、あまりにアリシアを「聖女」のように描きすぎではないかという批判は多いだろう。本物のアリシアは厳しすぎる現実から一度、逃げているのだが、映画ではそこは削り、一生、夫に尽くしぬいた妻として描かれている。
ジョンが再入院をやめる決意をした後からが、アリシアの本当の苦難の日々だったのは明らかなのに、映画では、夫に「リアルと幻覚は、頭ではなくてハートで区別するのかも」と印象的なセリフを
告げたあと、ほとんど画面に登場しない。確かに、そこからがジョンにとっても真の闘いの日々であり、妻の苦労は、夫の苦しみから
観客に想像させるしかなかったのかもしれないが、セリフは例えばなくても、共に老いてゆく妻の姿も欲しかったように思う。だが、
姿はなくても妻の存在のアピールを、監督は忘れていないことも、
書き加えておきたい。
母校プリンストン大学というゆりかごで、静かで長い闘いの日々過ごしゆっくり脱皮してゆくジョンの“再生”こそが、最大の山場であるが、そこには、象徴的に「妻のサンドウィッチ」のみが出てくる。これも、監督の意図なのであろう・・・。見えないけれど、確実に彼を支えている古女房を感じさせるのに、このサンドウィッチはとてもインパクトがあった。
◇難病と闘う男◇
ラッセル・クロウがこの役に挑むにあたって、「精神を病んでいる人間でも、本人の努力と、周囲の理解と強力があれば、普通に結婚し、子を授かり、仕事につける可能性がある」ことを伝えたい、と言っている。
『統合失調症』は、現代でも治療法が確立されておらず、周囲の無理解に苦しむ患者がたくさんいるのだ。
「人間の力を超えたことにも、挑戦してみたい」ジョンは挑戦し続ける男だ。数字に、真理に、病気に、そして、本当の自分の内面に。諦めないということ。言葉でいうほど簡単ではないからこそ、
半生をかけて挑戦し続け、現在も闘い続けるジョンに、我々は心動かされるのだ。
ステキなセリフがあった。恋人時代のジョンとアリシア。
数学でわからないことはなくても、愛が何だかよくわからない
ジョンに、アリシアがこう尋ねる。
How big is the universe?
Infinite.
How do you know?
I know because all the data indicates it’s infinite.
But it hasn’t been proven yet.
No.
You haven’t seen it.
No.
How do you know for sure?
I don’t, I just believe it.
It’s the same with love I guess.
(文献:DHC完全字幕シリーズ「ビューティフル・マインド」)
(以下、意訳)
宇宙の広さはどのくらい?
無限だ。
何故わかるの?
宇宙は無限だっていうデータがあるからさ。
でも、まだ証明はされていないんでしょ?
ああ。
見たこともないんでしょ?
ああ。
じゃ、なぜそれが真実だと?
さぁ。信じてるだけだ。
愛も、同じことだと思うの。
なかなか含蓄があります。数字では決して計れない『愛』。
生涯、夫の再生を信じ続けた妻の愛は、ここから始まっていたのですね。
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