『サンキュー、ボーイズ』【RIDING IN CARS WITH BOYS】2001年・米
監督:ベニー・マーシャル 
原作:ビバリー・ドノフリオ
脚本:モーガン・アプトン・ウォード

俳優:ドリュー・バリモア(ビバリー15歳〜35歳)
   ミカ・ブーレム(ビバリー11歳)
   スティーブ・ザーン(レイ)
   ジェームズ・ウッズ(パパ)
   ロレイン・ブラッコ(ママ)
   ブリタニー・マーフィ(フェイ)
   アダム・ガルシア(ジェイソン)
   サラ・ギルバート(ティナ)
   デズモンド・ハミルトン(ボビー)

<ストーリー>
1960年代、コネティカット州の小さな町、ウォーリングフォード。15歳のビバリーの夢は、作家になること。だけど周囲も認めるその文才は、もっぱら憧れの男のコに捧げる愛の詩についやされていた。ビブは夢中になっていた男のコにフラれ、気は優しいがお馬鹿なレイと付き合い始める。その恋が冷めかけた頃、ビブは妊娠してしまう。60年代の閉鎖的な田舎町の警察官である父にとって、中絶も未婚の母ももってのほか。ビブは、しかたなくハイスクールを中退、結婚&出産という、予期せぬ人生のコースを歩むことに。それでも夢を諦めず、同じようにできちゃった婚の親友と励ましあいつつ、子育てをしながら大学の奨学金取得を目指す。
だが--予想以上にレイはダメ男だった・・・・。
それから十数年。1986年ニューヨーク。35歳のビブと、大学に通う20歳の息子ジェイソンは、とある重要な件で、父を訪ねようと車を走らせていた。それぞれに問題を抱えて・・・。

<感想>
これは実話である。ドリュー・バリモアはビバリー本人とじっくり話し合い、役作りに励んだという。お子ちゃまでワガママで、万人に好かれる女じゃないけれど、過酷な状況でも夢を諦めない精力的なヒロインを、とてもよく表現していたと思う。

ビブの半生は、波乱万丈のようでいて、実はとてもありふれてもいる。だから、ハラハラしつつも、共感を呼ぶのだ。
60年代〜80年代は、アメリカの「価値観」が最も急変した時代であり、ビブもその波に揉まれて若き日々を過ごした。ベトナム戦争の泥沼化・・・健全なアメリカの崩壊・・・性のモラルの乱れ・・・崩れゆく家族・・・ドラッグの氾濫・・・謳歌される自由と退廃。
映画では、音楽と衣装やメイクで時代の移り変わりを魅せている。

監督のベニー・マーシャル(代表作:『ビッグ』 『レナードの朝』『ジャンピング・ジャック・フラッシュ』『プリティ・リーグ』等)自身も、18歳でママになっており、映像の端々にリアリティが息づいている。

欲しくて生んだわけではない子供を自分は愛せていないのではないかと正直に悩むビブの姿は、多くの女性の本音であろう。
子供のことを愛せるか、と親友に切り出したビブ。驚くフェイに、
ビバリー「マジな話よ、好きで生んだんじゃないもの」
フェイ「デキたから?」
ビバリー「恋が暴走しただけよ」

そこへこの名ゼリフである。
「愛しすぎちゃうと、愛してるかどうかよくわかんなくなっ
ちゃうのよ。」親友フェイの言葉である。目から鱗のこの言葉に、ビブは母としての自信を取り戻す。
このシーンはとても印象的だ。

母はお腹に命を宿したときから母親であり、父は子供が生まれてから父親になる、とよくいうのだが、ビブの場合は、母になる=自分のためだけに好きに生きられない、と最初は自分の中の母性を否定していた。ビブは、20年かけて、息子と一緒に「成長」してゆくのだ。

でも、必死に育ててきたあまり、子離れできなくなっているビブ。
守ってやっているつもりの息子に、実はすがっていたのだ。
それを息子に気付かされるラストはちょっぴり切なく、でも清々しい。
息子は、夢を実現する足枷ではなかった。息子がいたから頑張れた。息子にサンキュー、とことんダメ人間だけど愛情だけは豊かだった夫にサンキュー、ヤな奴だったけど青春の甘酸っぱい思い出をくれた憧れの男のコにサンキュー、そして、ワガママ娘を、叱ってくれて、でも受けとめてくれるパパに、サンキュー。

原題のRIDING IN CARS WITH BOYS、とてもステキな題だ。
車の中で、恋人と、パパと、息子と、忘れられない時間を過ごした
ビブの想いが詰まっている。


「たった1日で人生が決まることもある。
たった1日で人生が破滅することもある。
たった4、5日ですべてが変ってしまう、それが人生だ。」
by ビバリー・ドノフリオ

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