『K−PAX〜光の旅人』
【K-PAX】 2001年・米
制作:ローレンス・ゴードン
監督:イアン・ソフトリー
脚本:チャールズ・リーヴィット
音楽:エドワード・シャーマー
原作:ジーン・ブルーワー
 
俳優:ケビン・スペイシー(プロート)
  ジェフ・ブリッジス(マーク・パウエル)
  メアリー・マコーマック(レイチェル)
  アルフレ・ウッダード(クラウディア)
  ソール・ウィリアムズ(アーニー)
  デヴィッド・パトリック・ケリー(ハウイー)

<ストーリー>
初夏のニューヨーク。グランド・セントラル駅が不思議な光に包まれ、雑踏のなかに黒いサングラスをかけた男が現れた。プロートと名乗るその男は、自分は国も仕事も家族もない星"K-PAX"から来たと主張して病院の精神科へ送られ、そこでマンハッタン医学協会の精神科部長であるマークと出会う。
妄想癖のある記憶喪失患者として投薬を続けるが全く効き目がなく、とてもただの妄想とは思えないような正確さで宇宙の謎を語るプロートと、そんな彼の真実を見極め何とか救ってやりたいと思う医者。ふたりの間には、いつしか医師と患者の立場を超えた絆が芽生えていく。一方、プロートの患者仲間たちは、彼が異星人であることを疑いのない事実として受け入れていた。プロートには人々の心を開かせる不思議な力があったのだ。
やがて、プロートが故郷のK-PAXに帰るという日が近づいた。その「Xデー」に、何か大事件を起すのではないかと、マークは最後の方法として睡眠術による療法を試みる。やがて予想を越える凄惨な“過去”が浮上する・・・・。

<感想>
同時多発テロ以来、心が半壊状態だったアメリカ国民を虜にし、大ヒットとなったといわれるこの作品、ずばりテーマは“絆”と゛癒し”である。
この作品は、観客に判断を委ねられている。プロートが宇宙人だと思えば、SFファンタジー。いや、精神病者だと思えば、濃厚なヒューマンドラマ。だが、物語の本質を語るのに、彼が何物であるかはあまり実は関係がないのでは、と正直いって思うのだ・・。
彼が人間だろうと、宇宙人だろうと、テーマにかわりはないからだ。そんな作品が今までにあっただろうか。

ごく個人的な解釈としては、プロートは本人の言うとおり、K−PAXからきた宇宙人で、ロバートの肉体に憑依していた(あまりにも心に深い闇を持ち、光を求めるロバートの魂に呼ばれて肉体を借りた)。ベスを選んだのは、「あなたが青い鳥なんでしょ」と洞察されたことと、私には家がない=家の概念のない母星に馴染めると考えたから・・・。そして、他の患者の病気は治るが、彼女は治してもどこへも行けないから・・?

もちろん、家族、性行為に無関心を超え嫌悪感を示すプロート
を、ロバートのトラウマだと考えることも自然にできるのだが、
その場合、彼の天文学の知識と、消えたベスの謎に何の説明も
つかなくなってしまう。

だが、理責めでどうこう考えるよりも、素直に感じたい作品ではないか。わからなくていい。゛プロート”が地球に(彼に関った人々に)残していったものは、゛本来、人間が備えているはずの自然治癒・自己再生能力を思い出すこと”=゛青い鳥”という宝物だ。うつむき悲しむ人を癒せるのは、最終的に他人ではなく、「生きようとする本来の力」なのである。それこそが、この映画のテーマであろう。

この映画に流れる優しく不思議で美しい音楽も素晴らしい。
そして、ビックリ手品的ではない「光」の演出がいい。地球にもともとある自然の光・・・太陽光。プリズム。夜明けの光。星の光。夜の街を照らす生活の光。疲れたマークを迎える暖かい家の照明の光。心に闇を抱える精神病棟に射し込んだ光がプロートそのものであり、地球人にとって恐らく一番重大な問題「帰る場所がない」=絆を知らない という癒せない心の闇を抱えるベスだけを、永遠に太陽の沈まない光の星に連れていったとしたのなら・・・・魂の救済の寓話として読み取れる。

謎と悲しみを残し、同時に゛再生”の靴音を聞き取れる、素晴らしい作品なのである。

いつものことながら、ケビン・スペイシーの「掴めない男」の
演技には驚かされる。得意の「無表情」が最大限に発揮されているといえよう。

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