「アトランティスのこころ」
2003年1月17日アトランティスのこころ
【Hearts in Atlantis】2001年・米
監督:スコット・ヒックス
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
原作:スティーヴン・キング「黄色いコートの下衆男たち」(『アトランティスのこころ』の中の短編)
撮影:ピョートル・ソボシンスキ
俳優:アンソニー・ホプキンス(テッド・ブローティガン)
アントン・イェルチン(ボビー少年)
ミカ・ブーレム(キャロル)
ホープ・デイビス(ボビーの母)
デイビッド・モース(50歳のボビー)
<ストーリー>
1950年代。ボビーは、田舎町で母と2人で暮らしていた。父は幼い頃に亡くなり、写真でしか知らなかった。まだ若く美しい母は、息子よりも自分のことしか頭になく冷淡だ。11歳の誕生日を迎えた朝、母からプレゼントにもらったのは図書館の大人用貸し出しカードだった。
まわりの友達がみんな持っている自転車を、ボビーは買ってもらえずにいた。お父さんがギャンブルでお金をみんなスってしまったせいだと言う母。そのくせ母は、自分が着る最新流行の効果な洋服には湯水のようにお金をつぎ込むのだった。 だが、ボビーは悲しくなんてない。親友たちがいたから。野球少年のサリー、そして可憐で元気いっぱいの少女、キャロル。子供たちは豊かな自然と戯れ、日が暮れるまで笑いあっていた。こんな少年時代がいつまでも続くと思っていた・・・・・・。
そんな夏のある日。ボビーは、彼の家の二階に下宿することになった老人テッドと運命の出逢いを果す。テッドは、知的で穏やかな老人だが、ある“不思議な力”を秘めていた。その力ゆえに、「悪いやつら」に追われ、心安まることなく各地を転々とし暮らしてきたとボビーに語るのだった。父を知らず、父を憎んでいる母と暮らす少年ボビーは、テッドとの心温まる交流を通じ、次第にその視野をより大きな世界へと向けていくのだった。
だが、追っ手は迫る。しかも、追い討ちをかけるように、ある事件がきっかけでボビーの母に敵視され追い出されてしまうテッド・・・・。
<感想>
名優ホプキンズが語るとおり、大スペクタクルではなく、《小品》
なところがよい、小粒だが味の濃い作品である。
映画作品としては、101分の中で起伏が極端に少なく、淡々としたシーンが長く続き、ラスト付近で、説明不足のまま急展開をとげてしまい、観客が置いておかれたような感じをうけるかもしれない、その点は惜しい。
この作品は、1999年に出版されたS・キングの“Hearts in Atlantis”の中の(5編の短編による本)「黄色いコートの下衆男たち」の部分を映画化したものと考えていいだろう。
下衆男たちとは、テッドを追跡して悪利用しようとする者たちのこと。(映画では、黒ずくめの服で登場する)
(かつてはあったが沈んでしまった幻の大陸)アトランティスの心=ゆらゆらとして、いつかは失われてしまう子供時代の心。
なかなか味わいのある例えだ。
淡い恋、初めてのキス、大人の世界への扉を開く本、老人に教わる偉人の言葉、父の真実を知る夜、初恋の少女との別離、そして、世界は悪や暴力や恐れや悲しみに溢れていることを知るが、同時に“受け入れること”“赦す”ことも知る11才の夏。
人の心にある小さな魔法を信じれば、心の傷を癒せる。
そんな、典型的な少年時代との決別、喪失と再生を情感たっぷりに
描いていて温かい。
アンソニー・ホプキンス、そして名子役アントン・イェルチンの
名演技は言うに及ばず素晴らしかったが、特筆すべきはキャロル役のミカ・ブーレム。「サンキュー、ボーイズ」でのドリュー・バリモアの少女時代役や、「ジャック・フロスト パパは雪だるま」 の主人公の少年に憧れるクラスメート役が記憶に残っているが、実に明るく利発で勇気のある美少女を演じるのがうまい。この作品でも、彼女の意志の強い、それでいてこまっしゃくれていない愛くるしさが印象的だった。将来がとても楽しみな子役の1人だ。彼女の最新出演作は
「コレクター」の続編『スパイダー』。
スコット・ヒックス監督といえば、『シャイン』 。波乱万丈の物語ではなく、1人の人間の
内面を描くことに長けた監督である。
静かでホっとするラストシーンが心に残った。
子供の頃、一日は永遠に続くと思ってた。
でも今は、一瞬に終わってしまう。
【Hearts in Atlantis】2001年・米
監督:スコット・ヒックス
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
原作:スティーヴン・キング「黄色いコートの下衆男たち」(『アトランティスのこころ』の中の短編)
撮影:ピョートル・ソボシンスキ
俳優:アンソニー・ホプキンス(テッド・ブローティガン)
アントン・イェルチン(ボビー少年)
ミカ・ブーレム(キャロル)
ホープ・デイビス(ボビーの母)
デイビッド・モース(50歳のボビー)
<ストーリー>
1950年代。ボビーは、田舎町で母と2人で暮らしていた。父は幼い頃に亡くなり、写真でしか知らなかった。まだ若く美しい母は、息子よりも自分のことしか頭になく冷淡だ。11歳の誕生日を迎えた朝、母からプレゼントにもらったのは図書館の大人用貸し出しカードだった。
まわりの友達がみんな持っている自転車を、ボビーは買ってもらえずにいた。お父さんがギャンブルでお金をみんなスってしまったせいだと言う母。そのくせ母は、自分が着る最新流行の効果な洋服には湯水のようにお金をつぎ込むのだった。 だが、ボビーは悲しくなんてない。親友たちがいたから。野球少年のサリー、そして可憐で元気いっぱいの少女、キャロル。子供たちは豊かな自然と戯れ、日が暮れるまで笑いあっていた。こんな少年時代がいつまでも続くと思っていた・・・・・・。
そんな夏のある日。ボビーは、彼の家の二階に下宿することになった老人テッドと運命の出逢いを果す。テッドは、知的で穏やかな老人だが、ある“不思議な力”を秘めていた。その力ゆえに、「悪いやつら」に追われ、心安まることなく各地を転々とし暮らしてきたとボビーに語るのだった。父を知らず、父を憎んでいる母と暮らす少年ボビーは、テッドとの心温まる交流を通じ、次第にその視野をより大きな世界へと向けていくのだった。
だが、追っ手は迫る。しかも、追い討ちをかけるように、ある事件がきっかけでボビーの母に敵視され追い出されてしまうテッド・・・・。
<感想>
名優ホプキンズが語るとおり、大スペクタクルではなく、《小品》
なところがよい、小粒だが味の濃い作品である。
映画作品としては、101分の中で起伏が極端に少なく、淡々としたシーンが長く続き、ラスト付近で、説明不足のまま急展開をとげてしまい、観客が置いておかれたような感じをうけるかもしれない、その点は惜しい。
この作品は、1999年に出版されたS・キングの“Hearts in Atlantis”の中の(5編の短編による本)「黄色いコートの下衆男たち」の部分を映画化したものと考えていいだろう。
下衆男たちとは、テッドを追跡して悪利用しようとする者たちのこと。(映画では、黒ずくめの服で登場する)
(かつてはあったが沈んでしまった幻の大陸)アトランティスの心=ゆらゆらとして、いつかは失われてしまう子供時代の心。
なかなか味わいのある例えだ。
淡い恋、初めてのキス、大人の世界への扉を開く本、老人に教わる偉人の言葉、父の真実を知る夜、初恋の少女との別離、そして、世界は悪や暴力や恐れや悲しみに溢れていることを知るが、同時に“受け入れること”“赦す”ことも知る11才の夏。
人の心にある小さな魔法を信じれば、心の傷を癒せる。
そんな、典型的な少年時代との決別、喪失と再生を情感たっぷりに
描いていて温かい。
アンソニー・ホプキンス、そして名子役アントン・イェルチンの
名演技は言うに及ばず素晴らしかったが、特筆すべきはキャロル役のミカ・ブーレム。「サンキュー、ボーイズ」でのドリュー・バリモアの少女時代役や、「ジャック・フロスト パパは雪だるま」 の主人公の少年に憧れるクラスメート役が記憶に残っているが、実に明るく利発で勇気のある美少女を演じるのがうまい。この作品でも、彼女の意志の強い、それでいてこまっしゃくれていない愛くるしさが印象的だった。将来がとても楽しみな子役の1人だ。彼女の最新出演作は
「コレクター」の続編『スパイダー』。
スコット・ヒックス監督といえば、『シャイン』 。波乱万丈の物語ではなく、1人の人間の
内面を描くことに長けた監督である。
静かでホっとするラストシーンが心に残った。
子供の頃、一日は永遠に続くと思ってた。
でも今は、一瞬に終わってしまう。
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