バンディッツ【bandits】 1997年・独
★第10回ゆうばり国際 冒険・ファンタスティック映画祭グランプリ受賞
監督 カティア・フォン・ガルニエ
脚本 カティア・フォン・ガルニエ / ウーベ・ヴィルヘルム
出演 カーチャ・リーマン (エマ)
  ヤスミン・タバタバイ (ルナ)
  ニコレッテ・クレビッツ (エンジェル)
  ユッタ・ホフマン(マリー)
  ハンネス・イェニケ(シュヴァルツ警部)
  ヴェルナー・シュライヤー (人質くん、ウェスト)
  アンドレア・サバスキ (ルートヴィッヒ)
<ストーリー>
監獄で、性格も年齢もバラバラの4人の女たちがロックバンドを結成。ちなみに理解あるシスターが顧問、その名もバンディッツ(悪党)。大手レコード会社にデモテープを送っても“論外”と切り捨てられクサっていた。

ボーカル&ギターのルナは凶暴な強盗犯。性格も粗野でキレると手がつけられない。ベースのエンジェルは、最年少にしてヤリ手の結婚詐欺師。オシャレと男が大好きなセクシーガール。
キーボードのマリーは、中年で分裂症気味、自殺癖がある。夫殺しで服役中。そして、つい最近殺人で入所したばかりの、ドラム担当、エマ。プロのミュージシャンだった彼女には悲惨な過去があったが、誰にも語ろうとしない。

そんなとき、新しい囚人更正システムとして、警察のパーティーへの生出演が決まり大喜びの4人。いよいよライブ当日。会場へ向かう護送車の中でスケベ看守にキレたルナが大暴れ。チャンスとばかりにエマが護送車を強奪して脱獄に成功する。

脱獄女囚のロックバンドという話題性に目をつけたレコード会社は、以前送られてきたデモテープをラジオで流してみたら大ブームに。逃走資金を得るために、彼女たちはなんとレコード会社に乗りこみ、5万マルクをゲット。船で南米に渡る夢を実現させるため、
3週間後の出航まで、逃げてはライブ、通報されてはまた逃げ切って、とライブと逃走を繰り返すうち、CDも売れに売れ、ドイツ中にポスターが貼られ、押しも押されぬ人気絶頂バンドになっていくが・・・・。

<コメント>
ハリウッドでのリメイクが決まっているが、ブルース・ウィリス、
ビリー・ボブ・ソーントン主演の『バンディッツ』とはまったく無関係である。
全国的な人気者になってしまった脱獄犯の逃走ロードムービー、という点では同じだが。

音楽映画の要素の強い本作品、彼女たちのイカす演奏をたっぷり楽しめる。ボーカルのルナ役のヤスミン・タバタバイは、イラン出身の歌手。オリエンタルな魅力に溢れ、雌豹のように挑戦的で鋭い瞳が印象的だ。
荒唐無稽で破天荒、無茶なわりに不思議なリアリティを感じさせ、ハラハラさせられっぱなし。人質の青年とエンジェル、ルナそれぞれとのSEXシーンは二人の官能的な個性が全開、作品を盛り上げる。
1人、年をとっているマリーと、深い悲しみを秘めたエマの存在が、この作品を軽すぎる青春音楽映画に留めない。
「死がはじめるとき、死は終わるの」
マリーの言葉を噛み締めるメンバーたちの行く末は・・・・・。
ラストシーンは人によって解釈の分かれるところだろう。状況から連想される事態は1つだと思うのだが、あえて決定的に描かない監督のセンスに拍手。
生きる意味と証を音楽によって得た彼女たちは、輝いていた。
まだ30才の若きカティア・フォン・ガルニエ監督、一時期ブラピとの恋の噂が流れたので、ご存知の方も多いかもしれない。

最大の名場面は、ビートルズの『レット・イット・ビー』へのオマージュと考えられる、ハンブルグ港での屋上ライヴだろう。
繰り返される“Catch me”のサビ。観衆への願い。警察への挑戦、両方をかけたナイスな歌詞だ。檻から飛び立つ野生の鳥のように美しかった。

アメリカ映画のように“友情”をセリフで語らず、行動で示すところがたまらなくイイ。ギクシャクしつつも、音楽を通して4人の結束がしだいに縄をなうように固いものになっていく脚本が素晴らしい。

友達の証って何だろう。彼女たちの答は、“約束を守ること”。
黙って赦しあうことだった・・・。

殺人犯も2人いるのだが、マリーが夫を毒殺した理由が精神分裂によるものなのか、説明不足だったが、エマに関しては、『この森で天使はバスを降りた』 のパーシーに似て、
あまりにも気の毒なもの。
私利私欲のために殺人を犯した強欲な人間は、彼女たちの中にはいない。そうでないと、脱獄犯に“がんばれ、逃げ切って!”という応援の気持ちを観客に持たせるのはムリというものだ。


しかしまぁ、映画に描かれる警察の間抜けさと人間臭さは、2年後に公開されたニュー・ジャーマン・シネマの金字塔的存在の『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』でも継承されていて苦笑してしまった。

音楽と映像のカッコよさを楽しむだけでも、一見の価値はある。
とても好きなドイツ映画がまた増えた。

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