『キルトに綴る愛』

2003年2月12日
キルトに綴る愛
【How-to-Make-an-American-Quilt】 1995年・米
監督:ジョスリン・ムーアハウス
脚本:ジェイン・アンダーソン
原作:ウィットニー・オットー
撮影:ヤヌス・カミンスキー

俳優:ウィノナ・ライダー(フィン)
   アン・バンクロフト(グラディ)
   エレン・バースティン(ハイ)
   ケイト・キャプショー(サリー)
   クレア・デインズ
   サマンサ・マシス
   ジョアンナ・ゴーイング
   ジーン・シモンズ
   ケイト・ネリガン
   サマンサ・マシス
   ダーモット・マローニー(サム)

<ストーリー>
大学院生のフィンは26才、修士論文を仕上げるため、家を改造している婚約者のサムと一夏の間離れ、祖母ハイとその姉グラディが暮らす静かな田舎の家にやって来た。
やがてそこにはキルトを作るために7人の女たちが集まってくる。
結婚を間近に控えたフィンへ贈るベッド・カバーを作るためだ。やがて彼女たちはそれぞれの過去の恋愛や結婚の話をフィンに語り始める。フィンは、幼いときに両親が離婚しており、自分が“結婚”を控えた今、マリッジブルーに陥っていた。地元のハンサムな青年に心が揺れ、一生1人の男だけを愛する自信を失うフィン・・・。
人生の先輩たちの結婚にまつわる苦労話を聞くにつれ、一層混乱するフィンだった。

<感想>
キルトを丁寧に一針一針縫っていく老婆たちの手元に、人生を一歩一歩、歩んできた彼女たちの足跡を感じた。激動の人生、というわけではないところがいい。白人の雇い主に孕まされ苦労して娘マリアンヌを育てたアンナと、そのアンナの祖母の代の話が最も重みがあるが、あとは、夫の浮気や蒸発、自分の過ちなど、誰にでも起こり得る出来事である。だからこそ、フィンは自分の未来を投影して
考え込んでしまう。
結婚を目前に控えた女性が、「一生、この人だけ愛せるかしら、
一生、この人は私を愛し続けてくれるのかしら」という不安を
たったの一度も持たなかったことはきっとないだろう。女性なら誰でも、この物語に共感できるに違いない。

コンスタンスが、失敗した(と批判された)キルトのパーツを縫いなおす。人生はやりなおしはきかないが、夫婦仲、男女仲の“縫いなおし”はきっときく。チグハグになったら、原点に戻ってやりなおせるかもしれない・・・。コンスタンスの手元を見ていて、ふと
そんなことを感じた。

「恋を感じる相手と、心の友と、結婚するならどっち?」
恋愛遍歴は多いが独身の中年女性マリアンヌに尋ねるフィン。
「心の友(ソウルメイト)よ。」 即答するマリアンヌ。

そのマリアンヌが、初めて“心の友”と感じた名も知らぬ男性に
贈られた詩を見せてくれる。

若者は完全な愛を求め
年を経た者は 端切れを縫い合わせ
色の重なり合いの中に
美を見いだす


この詩こそが、この映画のすべてを語っているといえる。

カラスの伝説がロマンティックで素敵だった。
だが、フィンは、きっともう決めていたのだろう。愛しあう二人
を温かく包む大きなキルトが美しく感動的だ。人は1人では生きていけない。夫婦になっても、周りの人達に支えられて生きていく。
祖母とその仲間たちがそうであったように。大勢の手と心によってつむがれるキルトは、人生そのものの象徴なのかもしれない。

キルト=愛・絆、そしてマリッジブルーといえば、ニュージーランド映画の『ミルクのお値段』を思い出す。興味のある方は見比べてごらんあれ。

あの暴風のシーンはよかった。すべてを吹き飛ばし、心の中の淀みまで吹き飛ばすかのような・・・・。
夫がかつてつくってくれた小さな池に、そぉっと足を入れてフィンの原稿を拾うソフィアの胸の内を思い、目頭が熱くなった。

「やりなおすくらいなら新しいテーマに鞍替えするほうがラク?」

研究テーマをコロコロ変えるフィン。恋もそうだと、一生真実の愛は得られないよ、と人生の先輩たちが、次の世代のために、必死にバラバラになった紙とフィンの心と、それぞれの心をかき集めて、
アイロンを当てて、もう一回、キルトとはぎあわせるように繋いでくれる。実に深い温かさだ。


ヤヌス・カミンスキーのカメラワークが実にいい。空間移動の少ない作品だが、時間移動は激しい。カメラのフィルターによる色調の変化、アングルの巧みさに舌を巻く。
カミンスキーの撮影作品は
マイノリティ・リポート 2002年
プライベート・ライアン 1998年
アミスタッド 1997年
キルトに綴る愛 1995年
新作の「マイノリティ・リポート」以外は観ている。印象的な撮影者なので、今後も期待したい

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