「ランドリー」
2003年2月17日Laundry[ランドリー]
2000年・日
★2000年サンダンス・NHK国際映像作家賞
監督・脚本・原作:森 淳一
音楽:渡辺善太郎
主題歌:「Under The Sun」atami /vo. BONNIE PINK
俳優:窪塚洋介(テル)
小雪(水絵)
内藤剛志(サリー)
祖母の経営するコイン・ランドリーで働く青年テル。彼の仕事は、洗濯物を盗まれないよう見張ること。
両親もなく、やや知恵遅れ気味のテルにとっては、祖母とこのランドリーだけが世界のすべて。
ここには、いろいろな人々がやってくる。花の写真を撮るのが生き甲斐の中年主婦。息子の嫁に洗濯してもらえず自分の下着を毎日洗いにくる老人。連戦連敗のボクサー。誰もが日々の暮らしから出た汚れを洗いにきて、テルに話しかけ、洗濯物と一緒に心を真っ白にして帰っていくのだ。テルはそんな人々を毎日黙って見つめ続けている。
ある日、ランドリーに見慣れない女性、水絵がやってくる。テルは彼女の忘れた洗濯物を届け、それが縁で2人は知り合う。しかし、心に傷を持つ彼女は、自殺未遂を起こし突然帰郷してしまう。実家に戻ったものの、小さな田舎町では逮捕歴のある彼女は疎まれ、
逃げるように少し離れた町で再び1人暮らしを始めるのだった。
テルは水絵が残した血のついたワンピースを見つけ、彼女の深い悲しみを知る。祖母が詐欺にあい、ランドリーが人手にわたってしまったため自分の居場所を失ってしまったテルは、その忘れ物を持って水絵を訪ねるべくヒッチハイクの旅に出る。初めての“外の世界”。道中、強面だが心優しい男、サリーの助けにより、なんとか水絵と再会を果す。血を洗い流そうと洗い過ぎてボロボロにな
った服を受け取った水絵は、テルの優しさに笑顔を取り戻す。
祖母が亡くなり、帰る場所を失ったテルは、サリーの自宅を訪ねる。テルにアイ(愛)という言葉を教えてくれたその不思議な男は、白鳩を調教しセレモニーで飛ばす仕事をしており、テルを助手として住み込みで雇ってくれる。水絵は家事を引きうけ、3人の温かい時間が過ぎて行く。
だが、楽しい日々を打ち砕く事件が・・・・。
窪塚洋介の新しい魅力を堪能できる。記憶力に若干障害がある程度で、少しも呆けたところのないキリっと両端の上がった上品な口元、邪さのかけらもない澄んだクリっとした瞳。まさに、監督の望んだ「天使と、頭に傷のある青年のまんなかの存在」を演じきっている。
知恵遅れ=天使 という構図はやや古臭いし偽善的な印象は拭えないのだが、そんな設定がフっとぶほど、テルというキャラクターは
魅力的だ。お伽話でもいい。
恋でも友情もなくて、「アイ」。階段を飛ばして昇っているのではなくて、フワリと空をとんだような、そんな感情がいい。
人という字は支えあっているからこういう字なんだ、という有名な教えを地でいく物語。支えようと頑張らない。2人の人生の荷物が
同じくらいの重さだったら、きっとうまくいくのだろう。
人生はリセットはできない。過去をなかったことにはできない。
でも、繰り返し洗濯して、見えないほど悲しみや失敗というシミを薄くすることはきっとできる。テルの純粋さはそれを教えてくれる。人生はどこからでも、いつからでも、再出発できる。1つ居場所をなくしたら、次を探そう。うつむいて足元の水溜りばかり見ていないで、空を見上げてみよう。旅立ちを祝福する白いハトが飛んでいるのが見えるかもしれないから。
「こういうの地球では「アイ」っていうんだよ。宇宙では知らないけどね。」
タイトルロールで流れるBONNIE PINK歌う主題歌が実に美しい。
音楽が全般的にリリカルで好きだが、彼女の歌声の柔らかさは、
日に干した洗濯物のように心地よい。
2000年・日
★2000年サンダンス・NHK国際映像作家賞
監督・脚本・原作:森 淳一
音楽:渡辺善太郎
主題歌:「Under The Sun」atami /vo. BONNIE PINK
俳優:窪塚洋介(テル)
小雪(水絵)
内藤剛志(サリー)
祖母の経営するコイン・ランドリーで働く青年テル。彼の仕事は、洗濯物を盗まれないよう見張ること。
両親もなく、やや知恵遅れ気味のテルにとっては、祖母とこのランドリーだけが世界のすべて。
ここには、いろいろな人々がやってくる。花の写真を撮るのが生き甲斐の中年主婦。息子の嫁に洗濯してもらえず自分の下着を毎日洗いにくる老人。連戦連敗のボクサー。誰もが日々の暮らしから出た汚れを洗いにきて、テルに話しかけ、洗濯物と一緒に心を真っ白にして帰っていくのだ。テルはそんな人々を毎日黙って見つめ続けている。
ある日、ランドリーに見慣れない女性、水絵がやってくる。テルは彼女の忘れた洗濯物を届け、それが縁で2人は知り合う。しかし、心に傷を持つ彼女は、自殺未遂を起こし突然帰郷してしまう。実家に戻ったものの、小さな田舎町では逮捕歴のある彼女は疎まれ、
逃げるように少し離れた町で再び1人暮らしを始めるのだった。
テルは水絵が残した血のついたワンピースを見つけ、彼女の深い悲しみを知る。祖母が詐欺にあい、ランドリーが人手にわたってしまったため自分の居場所を失ってしまったテルは、その忘れ物を持って水絵を訪ねるべくヒッチハイクの旅に出る。初めての“外の世界”。道中、強面だが心優しい男、サリーの助けにより、なんとか水絵と再会を果す。血を洗い流そうと洗い過ぎてボロボロにな
った服を受け取った水絵は、テルの優しさに笑顔を取り戻す。
祖母が亡くなり、帰る場所を失ったテルは、サリーの自宅を訪ねる。テルにアイ(愛)という言葉を教えてくれたその不思議な男は、白鳩を調教しセレモニーで飛ばす仕事をしており、テルを助手として住み込みで雇ってくれる。水絵は家事を引きうけ、3人の温かい時間が過ぎて行く。
だが、楽しい日々を打ち砕く事件が・・・・。
窪塚洋介の新しい魅力を堪能できる。記憶力に若干障害がある程度で、少しも呆けたところのないキリっと両端の上がった上品な口元、邪さのかけらもない澄んだクリっとした瞳。まさに、監督の望んだ「天使と、頭に傷のある青年のまんなかの存在」を演じきっている。
知恵遅れ=天使 という構図はやや古臭いし偽善的な印象は拭えないのだが、そんな設定がフっとぶほど、テルというキャラクターは
魅力的だ。お伽話でもいい。
恋でも友情もなくて、「アイ」。階段を飛ばして昇っているのではなくて、フワリと空をとんだような、そんな感情がいい。
人という字は支えあっているからこういう字なんだ、という有名な教えを地でいく物語。支えようと頑張らない。2人の人生の荷物が
同じくらいの重さだったら、きっとうまくいくのだろう。
人生はリセットはできない。過去をなかったことにはできない。
でも、繰り返し洗濯して、見えないほど悲しみや失敗というシミを薄くすることはきっとできる。テルの純粋さはそれを教えてくれる。人生はどこからでも、いつからでも、再出発できる。1つ居場所をなくしたら、次を探そう。うつむいて足元の水溜りばかり見ていないで、空を見上げてみよう。旅立ちを祝福する白いハトが飛んでいるのが見えるかもしれないから。
「こういうの地球では「アイ」っていうんだよ。宇宙では知らないけどね。」
タイトルロールで流れるBONNIE PINK歌う主題歌が実に美しい。
音楽が全般的にリリカルで好きだが、彼女の歌声の柔らかさは、
日に干した洗濯物のように心地よい。
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